はじめに
Owlcat Gamesは、Pathfinder: KingmakerやPathfinder: Wrath of the Righteousなどのロールプレイングゲームで広く知られている独立系ビデオゲーム開発スタジオです。2016年の設立から今日まで磨き上げてきたスタジオ独自の美的センスとオーディオ技法は、新しいプロジェクトのたびに常に進化しています。
このブログ記事では、私たちが手掛けた最新作のWarhammer 40,000: Rogue Trader(以降Rogue Traderと呼びます)を取り上げて、サウンドデザインとミュージックへの取り組み方について解説します。すべてのテクニックを紹介することはできませんが、非常に興味深いものになることは確かです。
Rogue Traderについて簡単に説明すると、Warhammer 40,000の世界を舞台にした初の本格的なロールプレイングゲームです。このゲームでは、プレイヤーは大きな影響力を持つローグ・トレーダーの役割を演じます。仲間を引き連れて、財宝を探すために巨大なヴォイドシップで危険に満ちたコロヌスエクスペンスを旅します。このゲームの主な特徴は、1)アイソメトリック風(斜め上から)の視点、2)ターン制バトル、3)プレイヤーがヒーローグループを支配、4)複数のストーリー分岐とエピローグです。王道のFallout、Dragon Age、Baldur’s Gate (シリーズを問わず)のゲームがお好きであれば、きっとRogue Traderも気に入っていただけると思います。
私はこのプロジェクトでオーディオディレクターを務めました。新しいオーディオチームを立ち上げて、できる限り作業しやすい環境を整えることが私の主な役割でした。チームの中心メンバーは以下の通りです。
Ilya Efanov:リードサウンドデザイナー
Konstantin Kuzenkov:シニアサウンドデザイナー
Denis Filippov:サウンドデザイナー
Artem Boksha:サウンドデザイナーの追加メンバー
Pawel Perepelica:作曲家
目次
Rogue Traderのサウンドデザイン
芸術的な技法
ゲーム場面のアンビエンス
ローゴシック語でのバックグラウンドボイス
キャラクタの挑発とリアクション
Rogue Traderのミュージック
芸術的な技法
ミュージックの技法
カットシーンやシネマティクスとサウンドの同期
SoundFXのコンポーネント
ヴェールの劣化エフェクトでのミックスの微調整
最後に
Rogue Traderのサウンドデザイン
芸術的な技法
Warhammer 40,000の世界では、人類に暗黒時代が訪れています。テクノロジーの大半は喪失し、多くの裏切り者のゼノス種族を率いるケイオスの神が人類の存続を絶えず脅かします。
人類の帝国の暗黒世界が、ヘビーメタルファンタジーとSFの要素を一風変わった形で織り交ぜながら描かれ、そこに宗教的テーマが堂々と加えられています。この空気感をRogue Traderのサウンドデザインにも取り入れようと考えました。ゲームの全体的な音色を確立する一方で(「ゴシック」、「荒廃」、「暗黒」、「壮大」、「巨大」、「宗教的」のキーワードを使用)、さまざまな派閥に対する具体的な取り組み方も作成しました。帝国には主に「壮大、退廃的、ゴシック」なサウンドを使用し、ネクロンでは「古いがメンテナンスの行き届いたテクノロジー」の感じを出しました。ダークエルダーでは「有機的と人工的」なサウンドを使用し、宇宙船と武器ではSFの独特なサウンドの性質を維持しました。
このゲームでは、不毛な死の世界から過密状態の荒廃した世界まで、さまざまな場面が登場します。それぞれの場面で異なるサウンドが発せられ、さまざまな感情を呼び起こします。虚無感を表現する突風や照明がうなる音、居住地域で遠くから聞こえるローゴシック語での叫び声や命令、ネクロンの墓の割れ目から漏れる単調なハミングや不安を駆り立てる機械音などがあります。私たちはそれぞれの場面でそのようなディテールを強調し、ミュージックがなくても興味をそそるサウンドにしたいと強く思いました。
Rogue Traderでの戦闘はターン制であるため、やりすぎと言っても過言ではないほど武器のサウンドエフェクトの制作には力を注ぎました。特に敵を窮地に追い込んでいる時、それぞれの一撃に見合う手応えを感じられるようにする必要がありました。一撃が命中したか、あるいは外れたかをプレイヤーがはっきりと聞き分けることができ、発射音が壁に当たって跳ね返るようにしたいと考えました。活気ある雰囲気にするため、仲間だけでなく敵の複雑な会話システムも設計しました。彼らはスタンダードな戦闘イベントに対して反応するだけでなく、グループ内のメンバーに応じて個人的なコメントもします。
プレイヤーがサウンドを通してRogue Traderに登場する古代の機械装置をできる限り深く「感じられる」ようにしたいと考えました。このため重厚感のある機械の動き、電気の火花、重金属の衝撃、「アナログ」感のあるトランジションでゲームのインターフェースに特に注意を払いました。
ゲーム場面のアンビエンス
私たちが制作するゲームでは、アンビエンスが極めて重要です。アンビエンスは物語の一部であり、ゲームの場面や設定についてのストーリーを伝える役割があると確信しています。私たちは目に見えるオブジェクトだけでなく、その周りで起こるあらゆることから発せられるさまざまなサウンドも加えて、豊かなアンビエンスを作り出すよう努めました。プレイヤーの目から入ってくる情報より、耳から入ってくる情報を多くすることが大原則です。
この目標を達成するため、アンビエンスの技法と構造では以下の方法を使用しました。
- 部屋の音色: いくつか(3つ以上)のサウンドレイヤーをステレオフィールドを通して同じバランスで再生します。プレイヤーのポジショニングの影響を受けない状況では、これらのレイヤーには通常メインサウンドが入ります。突風、そよ風、虫の音などが例として挙げられます。
ここでの基本ルールは、もっと目立たせたいほかのサウンドのためにオーディオスペクトラムの中央部分を空けておくことです。ゲーム場面の背景で風やハチのうなる音が発生している場合でも、いつも250hzと800hzの間で少なくとも6dbをカットしてスペースを作りました。
また、これらのレイヤーに動きを加えるという、もう1つのルールが役に立ちました。絶えずノイズが聞こえる状態を好む人はいないため、時折ピッチを少し変えたり、フィルタをモジュレ―トしたりするとよいでしょう。 - スペックやアクセント:これらはリスナーの周囲にある仮想スペースでランダムに生成される1回限りのサウンドです。アンビエンスで重要な役割を果たし、特定のエリアで起こっている出来事をおおまかに伝えます。ワタリガラスの鳴き声?ベルの鳴る音?遠くの労働者の会話や歓声?こうしたディテールは、現在の場所の主な特徴を知らせてくれます。スペックを仮想空間に配置する場合があります。スペックの位置はランダム化するか、位置を変えずにステレオ(2ch)またはクワッド(4ch)で再生します。そしてもちろん、多くの場合ディレイ、フィルタ、リバーブを使用してリアルな質感を加えます。
- サウンドエミッタ:これらはシンプルです。機械装置、鳥、流れる水、蒸気、歯車、たいまつなど、ゲームの場面で目に見えるほとんどすべてのものがサウンドを発します。
- 目に見えないサウンドエミッタ:特定の場所に目に見えるオブジェクトがない場合でも、特定のサウンドを再生したい場合があります。例えばPathfinder: Kingmakerでは、さまざまな場面で目に見えないセミや鳥の鳴き声を追加してリアル感を高めたり、プレイヤーの注意を引き付けたりしました。
これにより、ゲーム場面の最終サウンドスケープがかなり複雑になることがあります。最終サウンドスケープにさらにサウンドを追加することもあります。街や都市などの人々が暮らす場所を訪れているシーンを想像してください。人々が会話や雑談を交わす声が、そこらじゅうから聞こえてくることが予想できると思います。
ローゴシック語でのバックグラウンドボイス
WH40Kの残酷な未来では、ほとんどの人がローゴシック語で話します。ローゴシック語で録音されたライブラリをネット上で見つけて購入することはもちろんできないため、私たち独自のライブラリを作成する必要がありました。幸運にも、私たちはPathfinder: Kingmakerの制作時にすでにこれを経験しました。意味不明な言葉での会話や感嘆の声を数多く録音し、ストールンランドの活気ある首都を表現しました。このお陰でプロセスの全体像があらかじめ把握できていました。
私たちは大群衆のループグループを録音する代わりに、さまざまなロケーション地点から聞こえてくる可能性のあるラテン語のフレーズを1つ録音しました。ほとんどは近くではなく離れた地点です。このようにして用意した群衆のレコーディングを使用し、そこにWH40Kの世界観を加えました。これが予算的に最もバランスの取れた解決策でした。
また、主要なリアクションをいくつか選び、各リアクションに合わせてさまざまなセリフを作成しました。セリフの種類は次の通りです。
- 賛成/反対
- 怒り
- 言い争い
- 抗議(否定、肯定、中立)
- 泣き声
- 失望
- 酔っ払いのお喋り
- 咳
もちろん、これらのフレーズをゲーム全体を通して使用する計画だったため、セリフをできる限り曖昧にしました。
その後に10人の声優(男性5人、女性5人)を採用し、それぞれの声優にセリフを一通り読んでもらい、セリフごとに5、6テイクを収録しました。これでセリフを個別に使用することも、ほかのボイス素材とミックスすることもできるようになり、選択肢が広がりました。ゲームプレイ中に非常に注意深く耳を傾けると、それぞれの帝国の中心地でこれらのフレーズが話されていることに気付きます。
キャラクタの挑発とリアクション
キャラクタのサウンドは、1)体の動き、2)ビジュアルエフェクト、3)ボイスの3つのカテゴリに大きく分けられます。最初の2つは非常にスタンダードですが(サウンドをUnityアセットにアタッチするか、アニメーションに割り当てます)、ボイスリアクションを適切に機能させるためにはカスタムソリューションが必要です。これについてさらに詳しくお話したいと思います。
Rogue Traderの世界を作る中心的な機能の1つは、私たちが開発したAskシステムです。Askはキャラクタによって話されるセリフであり、特定の状況や手法によってトリガーされます。例えば戦闘を開始したり、ダメージを受けたり、敵が特定の派閥に属していることに気付いたりした場合などです。ここではヒーロー、その仲間、敵との間で交わされる、短く真実味のあるやり取りを作成することを目指しました。これらのやり取りは、キャラクタの特徴付けや世界観を作る上で役立ちます。例えば、バトルシスターのアルジェンタは帝国のサイカーを見下し、異端やケイオスによって誰かが傷つけられることに我慢できないなど、パーティメンバーについて知ることができます。またケイオスを崇拝するカルティストグループが遭遇戦のはじめにプレイヤーを挑発する時の非人間的な行いの実態が分かります。
これをすべて実装するため、私たちは「Ask Component」というものを作成し、特定のリアクションに特定のセリフを割り当てることで特徴を定義しました。特定のリアクションで聞こえるセリフの数や、聞こえる頻度などの情報がこれに含まれます。これによりほかのセリフによって遮ることができるかなど、特定のセリフの再生で確認が必要なフラグを設定できます。この機能の柔軟性を活かして、これと同じコンポーネントを戦闘シーンの叫び声やうなり声にも使用しました。
このコンポーネントの最もよい点は、特定のクリーチャーのボイスを自由に変えられることです。生き物のアニメーションにボイスリアクションを直接アタッチする代わりに、これらのコールをAsk Componentに割り当てることで、クリーチャーのマスターアセット(Unit Blueprintと呼びます)内から選択できるようにしました。これにより、例えばもっと変化に富んだ召使のサウンドにしたかった時は、元の構造やWwiseのEvent名を維持しながら追加のAsk Componentを作成して、さまざまなボイスバンクを割り当てた後にUnit Blueprintの既存のアニメーションと組み合わせるだけで済みました。
Rogue Traderのミュージック
芸術的な技法
ローグ・トレーダーはWarhammer 40,000の世界の中でユニークな存在です。取引許可書を使用することで、銀河を制限なく横断することができ、許可書なしでは厳しく禁じられているゼノスとの交易などの活動を遂行できます。昔の海賊のようにほぼ無制限の自由が与えられていますが、人類の帝国の利益のために取引許可書を使用することが期待されます。
私たちはRogue Traderのミュージックを制作する際に、主な目標として以下を設定しました。
- Warhammer 40,000の世界観を大切にする
- ローグ・トレーダーの自由を強調し、海賊を彷彿させるものにする
- WH40Kゲームの旧バージョンのような純粋なオーケストラサウンドトラックにならないように、実験できる余地を残す
- Owlcat Gamesスタジオの伝統に従って、非常に感情豊かで卓越したメロディを使用してミュージックを制作する
トラックのベースパレットのほとんどは、シンセサイザー、コーラス、オーケストラで構成されますが、派閥によってミュージックで別の要素を際立たせたり、異なるジャンルを取り入れたりする場合があります。
例えばフットフォールは何人かのローグ・トレーダーが常に影響力を競い合う場所ですが、私たちはアコースティックギターと民族楽器を追加して、ほったて小屋のような要素で帝国の壮大さを打ち消してバランスを取りました。ケイオスによって支配されている場所では、エレクトリックギター、メタルパーカッション、歪んだサウンドを多く使用しました。ダークエルダーが登場するシーンでは、プレイヤーは戦闘が強力な工場のテーマによって切り取られることを予測できます。またスペースハルクに乗船する時はいつも騒音に満ちたトラックが伴い、空虚感を表現するアンビエンスと完璧に絡み合って心を乱す感情を生み出します。80時間以上のゲームについては多様性が鍵となります。
ミュージックの技法
Rogue Traderのミュージックは、技術的には探検、戦闘、物語のテーマ(通常カットシーンやダイアログで再生)で構成されます。戦闘トラックは対戦の難易度に基づいて変化します。戦闘トラックごとに2つのバージョンを作成し、平均的な戦いと困難な戦いの違いを強調しました。一連のランダムなフラグメントを使用してトラックを進化させて、戦闘テーマの繰り返しを少なくしました。
私たちの大きな課題の1つは、ミュージックでの繰り返しを避けることでした。これを実現するため、探検ミュージックと戦闘ミュージックの両方でいくつかの方法を組み合わせました。
探検ミュージック:
- 通常3つの長いミュージックキューから構成されます。ミュージックキューは1分間のポーズによって分けられて、プレイヤーにロケーションサウンドを味わう余地を与えます。
- これらの2つのキューでは、アンビエンスの特徴を強く表す必要があり、3つめのキューでは、印象的なモチーフを表現するのが一般的です。私たちはこれを「ロケーションのボイス」と呼んでいます。プレイヤーの心の中にある特定の場所と関連付けることが目的です。
戦闘ミュージック:
- 5、6個の短いミュージックキュー(「フレーズ」と呼びます)で構成され、4~6分のループでランダムに再生されます。
- 対戦の難易度が簡単、普通、困難かに応じて、2つの若干異なるフレーズセットが使用されます。対戦中に難易度が変わると、ミュージックも同様に変わります。
これらの探検ミュージックと戦闘ミュージックのキューを組み合わせてロケーションミュージックセットと呼ばれるものが作られます。Rogue Traderでは以下に示すように12個あります。
世界:
- 帝国の世界
- 死の世界
- 未開拓の世界
- 庭の世界
- 墓の世界(ネクロン)
- ダークエルダーの世界
- ケイオス登場の世界
宇宙船:
- インペリアルヴォイドシップ
- スペースハルク
- ヴォイドシップハブ
その他:
- フットフォール(Rogue Traderのいくつかの王朝によって支配されている大きな惑星)
- 宇宙空間
残りのミュージックは、いわゆる「感情的なテーマ」(特定のムードを強調するミュージックで、通常はダイアログやカットシーンで再生されます)、システムのテーマ(メインメニューのテーマ、キャラクタ生成のテーマなど)に沿って分けられています。そしてもちろん、ボスとの対戦トラックもあります。Rogue Traderには69個のゲーム内トラックがあり、すべてを合わせると3時間を超えます。私たちがこれまで手掛けた中で最も長いトラックです。
次にプレイヤーが興味を持つと思われるいくつかの技術的な瞬間にハイライトを当てたいと思います。
カットシーンやシネマティクスとサウンドの同期
私たちがゲームにはじめて複雑なカットシーンを追加したのは、Pathfinder: Wrath of the Righteousの第2弾DLCでした。それまでは、クローズアップおよびミディアムのカメラショットの実行方法に不安を感じていたため、非常にシンプルなカットシーンにしていました。アイソメトリックカメラビューのゲームではキャラクタや質感が詳細に描かれないことが多いため、特にAAAタイトルゲームのグラフィックと比較されて、カットシーンでの私たちの欠点が強調されるのを避けたかったことは言うまでもありません。
それにもかかわらず、私たちは社内テストを繰り返した後に映像表現が単純でも、複雑なカットシーンを使用することで、ゲームの全体的なエクスペリエンスと芸術的効果を高められるという結論に達しました。次の課題は、これらのカットシーンに適切なサウンドを追加する方法を見つけ出すことでした。
Rogue Traderでは、すべてのアニメーションシーケンス、VFX、サウンドのマスタートラックとしてUnityタイムラインを使用しています。最大の問題は、オーディオと映像を適切に同期する方法を見つけることでした。
通常はすべてのサウンドエフェクトを1つの大きなオーディオトラックに焼き付けて、映像より高い優先順位を割り当てます。グラフィックフレームがいくつかスキップされても問題ありませんが、プレイヤーが映像と合っていないオーディオを聞きたくないことは確かです。これにより没入感が全面的に損なわれます。
しかしながら、インターチャプターに限ってはこの方法を使用しました。ゲームで新しいチャプターを開始するたびに、短い動画が再生されてアドベンチャーの次のステージについて紹介されますが、これがインターチャプターです。インターチャプターはスタンダードな動画ファイルとして再生されるため、私たちがすべてのサウンド、ミュージック、ボイスオーバーを1つのオーディオトラックに焼き付けた後に、私たちのスタジオのプログラマーがオーディオと動画が常に厳密に同期されるようにプログラムコードを記述しました。
しかし、ゲーム内のカットシーンに対しては、多種多様なゲームオブジェクトやユニットが関与していて、さまざまな理由でそれらを独立して機能させる必要があるため、この技法を使用しませんでした。代わりに、カットシーンのオーディオトラックをいくつかの異なるレイヤーやセグメントに分けて、次のパラメータで特定のタイミングでタイムラインに追加することにしました。
- カットシーンの全体については、ループ位置の指定なしでアンビエンスのほとんどを再生します
- キャラクタやセグメントに応じてアクションシーケンスを分けて、特定のタイミングで各種ゲームオブジェクトの個別のサウンドエフェクトとして再生します
- ビジュアルエフェクトで必要なシネマティックサウンドエフェクトや追加のサウンドも個別に再生し、ゲームオブジェクト上または位置指定されていないサウンドとして生成できるようにします
- 通常ユニットは追加のサポートなしに足音、鎧のフォーリー、ボディフォールのサウンドを再生します
カットシーンのオーディオにグラニュレーションをかけることは通常あまりありませんでした。ここでの基本ルールは、重要なアクションイベントやシーケンスをすべて分けることでした。これにより、ある時点でカットシーンがスタッタリングしても、オーディオの残りの部分が影響を受けることはありません。このようにして、ゲームオブジェクトでサウンドエフェクトを継続して生成することができ、常に適切なタイミングで再生を開始することができました。
ここでのもう1つの興味深い課題は、ユニットのアニメーションやVFXですでに使用している特定のサウンドで、スコアの修正が必要になる場合があることでした。修正によりカメラの距離や角度によって、サウンドの音量が下がりすぎたり上りすぎたりしました。このような状況が発生した場合は、Wwise Stateを使用してサウンドにアテニュエーションを適用するかサウンドをミュートして、カットシーントラックのサウンドと衝突しないようにしました。
SoundFXのコンポーネント
私たちが使用したもう1つの魅力的なオーディオ機能は、ゲーム内のさまざまなサウンドのミックスを可能にするUnityコンポーネントです。サウンドデザイナーはUnityコンポーネントを使用して、複数のレイヤーからサウンドエフェクトを作成できます。
この機能は私たちの発明ではないことをお伝えしておく必要があります。私たちは最初のゲームであるPathfinder: Kingmakerに取り組んでいる時、ほかのいくつかのRPGのポストモーテムについて調べました。Dragon Ageシリーズを調査していた時、どのようにして何千もの魔法サウンドをメモリ予算内に収めることができたのかを学びました。彼らの解決策は一連の基本的なサウンドを作成し、さまざまなパラメータを使用してそれらをゲームオブジェクトで組み合わせられるようにして、どのようなビジュアルエフェクトが必要になっても最終的に仕上げられるようにすることでした。
これはすばらしいアイデアだと思ったので、私たち独自のコンポーネントを実装して、ほぼ同じことができるようにしました。私たちのコンポーネントの場合は、必要なあらゆるサウンドを生成してから、それぞれにピッチ、ゲイン、ディレイを設定することができます。
このコンポーネントにより、バラエティに富む数多くのサウンドを生成できただけでなく、同じサウンドを再利用できるようになりました。この方法でレイヤーを組み合わせてVFX向けのサウンドをすべて作成したわけではありませんが、この手法によりSoundFXの制作時間や使用メモリを大幅に節約できました。総じて独自のサウンドを作成する必要があったのは、組み合わせを変えることでは対応できないエフェクトの場合のみでした。
ヴェールの劣化エフェクトでのミックスの微調整
Warhammer 40,000の世界には、ワープ(別名インぺリウム、エンピリアン、魂の海)と呼ばれる純粋なエネルギーから成る異次元があります。ワープはプレイヤー独自の世界であるマテリウム内に存在する、すべての知覚生物の感情や魂によって燃料補給され、ケイオスの動力源でもあります。
現実空間とワープの間にあるバリアは「ヴェール」と呼ばれ、さまざまな方法で侵害される可能性があります。Rogue Traderでは、プレイヤーがサイカーのアビリティを利用してワープに到達すると、こうした事態が発生することがよくあります。これによりヴェールが劣化して、ワープが現実空間に「漏れ出し」はじめて、危険な結果を招きます。
ヴェールの劣化はゲームのどのタイミングでも発生する可能性があるため、1)どのようなサウンドが再生中であっても変更し、2)それらのサウンドに特定のサウンドをかぶせるシステムを作成する必要がありました。このシステムを作動させるのはWeatherIntensityという名前のRTPCです。このRTPCはプレイヤーに現在のヴェールの劣化レベルを伝えます。レベルはWounded、Bleeding、Tornの3種類あります(劣化レベルが最低から最高の順) 。
ゲームが開始されると、Eventがこれらのステートで位置指定されていないサウンドを使用して、スイッチコンテナを実行します。このスイッチはWeatherIntensity RTPCによって制御され、同じRTPCが次にゲームバスやActor-Mixerで必要な変更を行います。ディレイやリバーブの追加、高周波数のカット、ロケーションサウンドのボリューム調整、ボイスオーバーなどです。
最後に
Rogue Traderは、私たちが手掛けたPathfinderゲームを技術的に直接引き継いでいます。すべてをUnityで作成し、オーディオにはWwiseを使用しました。アイソメトリック視点を備え、たくさんのキャラクタが登場する複雑な戦闘システムです。
私たちはゲームに超現実的なサウンド特性(サウンド伝播やアーリーリフレクションなど)を実装するための十分なリソースを用意できなかったため、代わりにゲームが繰り広げられる世界で活気に満ちて真実味のある雰囲気を作り出すことに力を注ぎました。Pathfinderのファンタジー性の高いゴラリオンでもWarhammer 40,000の残酷な世界でも、取り組む姿勢は同じでした。
Wwiseのおかげで、私たちのような小さなオーディオチームでもこれを実現できました。最優先事項を慎重に選ぶことが成功の秘訣です。私たちの場合は、後世まで語り継がれるような魅惑的なストーリーを常に伝えることです。その中でオーディオが果たす役割の大きさは計り知れません。
このブログ記事を最後までお読みいただきありがとうございます。私たちのゲームのファンがいらっしゃいましたら、次回にお届けするアドベンチャーゲームをお楽しみいただけると幸いです。
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