はじめてみよう
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ビデオゲームの音楽は、見ている人の気持ちを左右したり、体験中の感動を高めたりすることができます。例えば、不気味なトレモロストリングスが続くことでこれから何が起きるのかが分かったり、シンフォニーのクラッシュ音で、今あったばかりのことが強調されたりします。このようなアイディアは、無声映画の上映中に、スクリーンの下の暗闇でピアニストの生演奏が行われた頃の映画音楽の考え方と、共通するものがあります。もちろん、映画とビデオゲームの一番の違いは、前者は、観客が参加者ではないのに対して、後者は積極的な参加者として、スクリーン上のアクションに直接影響を与えるということです。ビデオゲームでは、プレイヤーがプレイする度にイベントの流れが変わります。映画向けの従来のリニア(線形)な楽譜のアプローチでは、常に変化し続けるビデオゲーム環境では限界があります。さらに、ビデオゲームの音楽はプレイヤーにフィードバックを返す役割もあり、成功すれば褒めてあげ、負ければたしなめます。
もう一つ、ゲームと映画の大事な違いは、時間の流れの有無です。映画は、初回上映も100回目も、同じシーンが再生されます。予測可能なので、肝心な場面で音楽も高揚するように簡単に計画でき、シーンの雰囲気の移り変わりに合わせてトランジション(変遷)をどうするべきか分かります。映画のコンポーザーが使うようなDAW(Digital Audio Workstation)は、映画のタイムライン内の全てのフレームに音楽をシンクできる専用機能が備わっているのが一般的です。一方、ビデオゲームにはタイムラインがなく、プレイヤーがいつまでその場で休憩するのか、いつ突然危険に飛び込んでいくのか、そして憎たらしい敵に打ち勝つその瞬間はいつなのか、知る由もありません。ゲームと同じくらいダイナミックに変化できる音楽スコアを作成するのに必要なのは、ゲームプレイに直接つなげて反応できる独自のツールです。
ゲームプレイが予測不可能に反応する性質があるからこそ、それに対応する用語であるインタラクティブミュージック、ダイナミックミュージック、アダプティブミュージックなどが生まれましたが、従来のリニアなスコアとビデオゲーム音楽を区別するために必要なこれらの表現は、何が違うのでしょう?それは回答者によって異なり、「何も違わない」という人もいれば、時には相反するような、細かい違いを挙げる人もいます。単純に言えば、それぞれの用語の意味について、確固とした定義がまだないのです。それでも3つの用語に共通しているのは、音楽のノンリニアな(線形でない)性質です。つまり様々な要因、例えば単純なランダム再生や、具体的なプレイヤーのアクションや、朝昼晩など全体的な状況などに合わせて、音楽が変化したり発展したりするのです。音楽のノンリニアな部分はWwise上のInteractive Music Hierarchyで管理し、Wwiseの中でも、ビデオゲーム音楽の具体的なニーズに対応する独特な機能が多数整備されています。