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Wwiseでマルチサンプルインストゥルメントを設定する場合、マルチサンプルインストゥルメントで使うオーディオファイル毎に個別のサウンドSFXオブジェクトを作成するというのが、基本的なアプローチの仕方です。コツは、あるサウンドSFXオブジェクトにおいて、その単一サウンド本来のノートの範囲に入るMIDIノートだけに、サウンドSFXオブジェクトが反応するように設定することです。これを達成するために、サウンドSFXオブジェクト用に用意されたMIDIフィルター機能を使います。
SulingサウンドSFXオブジェクトでは、下のFiltersグループにKey Range値があります。これは、このサウンドSFXオブジェクトが反応するノートの範囲を設定するところです。
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FilterのKey Rangeプロパティを、Min値はC#5に、Max値はF5にして、トラックを再生します。
再生されなくなったノートがいくつかあるのが、聞いて分かります。設定した範囲内にあるノートだけが、聞こえます。
同じ考え方がVelocityなどのMIDI値にも適用され、やさしく演奏したノートが1つの音をトリガーするとしたら、強く打ったサウンドは別の音をトリガーします。
スリンに関しては、演奏家が複数のピッチで演奏して、それぞれ別のレコーディングとして作成してあるので、それぞれのピッチを個別のサウンドSFXオブジェクトとして取り込めます。これまでいくつかの演習に分けて利用した処理を繰り返さなければなりませんが、マルチサンプルサウンドは場合によって数百件ものオーディオファイルがあるので、大変な作業になりかねません。処理を速めるためにいくつかのショートカットを使って、同じ結果に到達できます。
サウンドSFXオブジェクトがMIDI情報にどのように反応するのか、基本が理解できたところで、SulingサウンドSFXオブジェクトはもういりません。
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先ほど作成したSulingサウンドSFXオブジェクトを削除します。
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Musicワークユニットを右クリックして、Import Audio Filesを選択します。Add Foldersボタンをクリックして、Wwise-201 Cube Music > Boss > Boss-D > Boss-D Suling Samplesフォルダを開き、Select Folderをクリックします。
ファイル名からそのノートを演奏した時のピッチが分かることを、覚えておいてください。Root Noteポジションをアサインする時に、非常に便利です。
またデフォルトで、Project Explorerでバーチャルフォルダを作成するのに、ファイル構成のフォルダが使われます。これは不都合です。そうではなく、サウンドSFXオブジェクトを1つのオブジェクトにまとめて入れて、そのオブジェクトから中のサウンドSFXオブジェクトを全て同時に再生できるようにしたいわけです。この目的で使うオブジェクトがブレンドコンテナで、あとでBoss-D-Sampler-SulingミュージックトラックのMIDI Targetにします。
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最初の行をBlend Containerに変えて、Importボタンをクリックします。
Project Explorerに、Boss-D Suling Samplesブレンドコンテナが表示されます。
あるノートの同じピッチ用にサンプルが複数ある場合は、ランダムコンテナを使って1つのノートのバラエティを増やせます。
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Boss-D Suling Samplesブレンドコンテナを選択して、Property EditorのMIDIタブをクリックします。
サウンドSFXオブジェクトと同じMIDI設定が表示されます。この親オブジェクトではデフォルト値をそのまま使いますが、Keymap Editorを使うと、中に入っている全ての子オブジェクトの、調整したいプロパティが表示されます。
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Keymap Editorボタンをクリックします。
中に入っている全てのSulingサウンドSFXオブジェクトが、一覧表示されます。
Keymap Editorのメリットとして、全ての個別オブジェクトで今まで調整した共通MIDIプロパティが、見やすい1つのウィンドウでまとめて見ることができます。
一覧を一目で確認しながらMIDIノートトラッキングをオーバーライドして、MIDIノートトラッキングを有効にできます。
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1行ごとに、まずOverride MIDI note trackingチェックボックスをクリックしてから、Enable MIDI note trackingチェックボックスをクリックします。
次に、MIDI tracking root noteを調整して、各オブジェクトのキー範囲を設定します。Root Noteは単に、オブジェクト名に記載されているノート名のことです。
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MIDI tracking root noteがオブジェクト名に提示されたノートに合うように、修正します。
Key Range Min値はRoot Noteと一致するように設定しますが、Key Range Max範囲値の計算はやや複雑です。2つのサウンドSFXオブジェクトのKey Range範囲が重なる場合は、1つのMIDIノートで2つのオーディオファイルを再生できる可能性があります。このため、Key Range Max値は、必ず次のオブジェクトのKey Range Min値より、1ノート分だけ低く設定します。これで、あるオブジェクトのRoot Noteが、次のサウンドSFXオブジェクトが始まる直前までの、全てのMIDIノートメッセージ用の音の再生を担当できます。最初に問題となるのはこの一覧でオブジェクトがアルファベット順に並べられているため、ノート名がキーボードと違う順番で表示されることです。これを変更するためにはMIDI tracking root note列のヘッダをクリックします。
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MIDI tracking root note 列のヘッダをクリックし、各オブジェクトの Key Range Min と Key Range Max プロパティを調整します。Key Range Min 値は MIDI tracking root note と一致するように入力します(ただしマッピングがMIDI範囲全体をカバーできるようにするためには、Suling_F#4を例外的にC-1に設定します)。Key Range Max値を入力し、ほかのオブジェクトと重ならないようにします。下図を参照に、あなたの作業内容を検証します。
最後に、Boss-D-Suling1ミュージックトラックをBoss-D Suling Samplesブレンドコンテナにアサインしなおします。
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Boss-D-Suling1ミュージックトラックを選択して、Boss-D Suling SamplesブレンドコンテナをMIDI Targetフィールドまでドラッグします。
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Boss-Dミュージックセグメントを再生します。
全てのノートが再生されるのが聞いて分かりますが、ノート毎に参照するオーディオファイルが違うので、リアル感が増して音の重複も最低限に抑えられます。
Boss-D-Sampler-Sulingミュージックトラックが、最初のRandom Stepサブトラックを強制再生するように設定してあることを、思い出してください。Sulingトラックの様々なバージョンを聞くには、強制再生の設定をオフにします。
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Music Editorを開いて、Boss-D-Sampler-SulingミュージックトラックのForce Usageをオフにします。Profilerレイアウトで、MIDIミュージックトラックが再生されている時に具体的に何が起きているのかが分かり、処理中のMIDIノートや、その結果再生されるサウンドSFXオブジェクトなども表示されます。
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Transport Controlでピンを外し、Bossミュージックプレイリストを選択してから再生します。
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キャプチャーセッションを開始してから、Profilerレイアウトに移ります。
様々なMIDIデータが全てCapture Logに記載されて、Schematic Viewではトリガーされている様々なSamplerオブジェクトが簡単に確認できます。
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Stop Captureをクリックします。
ボスミュージックは、マップの最後で起きるボスのファイトで初めて再生されるという前提で、作曲されています。ただしレベルの最初の部分をプレイしながら自分で実装した内容を聞いてみることができれば、おもしろいかもしれません。そのためにはEvent Viewerで Music を選択し、Project Explorerの Boss Music Playlist Container をEvent Property Editorの Combat ミュージックにドラッグ&ドロップします。あるいはサウンドデザインを変更せずにそのままにしておくこともできます。
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サウンドバンクを生成して、Cubeをプレイします!
聞いてみると、数十年前に誕生したMIDIプロトコルも、Wwise Synth Oneやサンプルベースのインストゥルメントを使えば、現在のビデオゲームに利用できるのが分かります。自分の作曲した音楽に、驚くべき多様性をつくり込む戦術をいくつも習得できたところで、次のレッスンに進み、ゲームが楽曲を誘導するための方式を学んでください。